1
僕はたまに頭良さそうと言われる。
頭良さそうは褒め言葉ではない。
「理系っぽいよね」が悪口なのと一緒だ。
理系っぽい人と言われて何を思い浮かべるか。
メガネをかけて頭ボサボサで、
喋り方が単調で、
痩せててモテなさそうな人を僕は想像する。
頭良さそうもほぼそれだ。
2
頭の良さは不遇だ。
僕は島根と鳥取を逆にした上で任意の角度に回転してなんなら左右反転しても答えられるけど、
別にそんなの誰も褒めてくれない。
むしろ引かれる。
3
大学受験の時に言われて新鮮だったことがある。
センター現代文は、
選択率が1番高い答えが必ず正解になるのだ。
どんなにいやらしいひっかけ問題でも、
必ず正解の方が選ばれるのだ。
ちょっと不思議というか、意外だった。
そういう地味で当たり前で1番普通の答えを出せるのが頭の良さなのだ。
4
天才は違う。
りんごが落ちるのを見て重力を発見するのは天才だと思う。
僕のイメージする頭の良さはこっちだった。
5
頭の良さは「当たり前品質」なのだ。
別に蛇口をひねって水が出て来ても誰も褒めてくれない。
それは当たり前だから。
頭のいい人はとんでもないひらめきを提示するわけじゃない。
ただ求められたらおいしくもない水道水を出す存在だ。
ポンジュースを出してくれるわけじゃない。
6
そしてモテるのはポンジュースなのだ。
ひねっても何も出ないことがあるけど、
たまに甘いオレンジジュースが出てくる。
そう言うやつの方がモテる。
島根県が分からなくても、
サッカーのできる奴がモテる。
7
子供の頃サッカー部がモテてるのが羨ましかった。
そこでサッカー部に入れば良かったんだろうか?
母親はサッカー部がモテるのは今だけだと言った。
勉強してれば大人になってモテると言われた。
僕はまだ母親の言ったことを信じてるのだろうか。
いつになったら僕はモテるだろうか。